研究

消滅可能性自治体の再定義

国の統計データをUMAPとクラスタリングで整理し、ローカルで動く小規模言語モデルを追加学習して、人口だけでない視点で消滅可能性自治体を捉え直す研究

私が育ち、いま住む愛媛県上島町は、「消滅可能性自治体」の一つです。将来的に人口の維持が困難になると言われている地域を指す言葉ですが、その判定は人口の観点だけで行われています。産業をはじめ、その町ならではの強みは一切考慮されません。一方で、各自治体に関する国の統計データはすでに揃っています。

この研究は、そうした公的データを使って消滅可能性自治体をより多面的に捉え直せないか、という試みです。関西大学博士課程の井下 敬翔さんと共同で進めており、国が持つ都市のビッグデータで環境や社会をよくすることを目指す「アーバンコンピューティング」という分野に属します。論文「Re-Defining Vanishing Municipalities in Japan: A Multidimensional Clustering and SLM-Based Policy Insight Framework」はIEEE 15th Global Conference on Consumer Electronics(GCCE 2026)の論文集に掲載予定で、2026年10月に口頭発表を行います。

課題

日本には、SSDSEという国の統計データや国土交通省(MLIT)のデータなど、自治体を多面的に特徴づけられるデータがすでにあります。しかし、既存の大規模言語モデルにSSDSEを一度に読み込ませることはできず、せっかくの情報源が活かしきれていません。また、自治体が使うAIである以上、情報漏えいのリスクを気にせずに使える安全なものでなければなりません。

手法

新しい手法を発明するというより、既存の技術を組み合わせて一つのシステムにする研究です。まず、生データに含まれる空白や不要な情報を取り除きます。次にUMAPで多次元のデータを2次元に圧縮し、相関のあるデータごとに分類(クラスタリング)します。最後に、その結果を既存のモデルに追加学習(ファインチューニング)させ、ローカル環境でも動く小規模言語モデル(SLM)を作ります。

目指しているのは、特定の地域のことをよく知っていて、「この地域は今後どうすればよいか」と尋ねられたときに根拠のある答えを返せるモデルです。また、データが活用されていないことは評価指標がないことでもあり、国の正式なデータに基づく評価指標を得られるシステムにもなり得ると考えています。難しいのはAI分野の進歩の速さで、知っていた手法が毎日のように上書きされていくなかで、一見組み合わせられそうにないアルゴリズムをどう組み合わせるかという柔軟な発想が求められます。

現状

論文は未公開のため、結果についてはここでは触れません。掲載後にこのページを更新します。なお、対象分野のデータで小規模なモデルを追加学習し、ローカルで動かすというこの考え方は、暗所点検向けの事業Beaconに組み込もうとしている言語モデル層の土台にもなっています。

関連する業績

  • Re-Defining Vanishing Municipalities in Japan: A Multidimensional Clustering and SLM-Based Policy Insight Framework

    Toma Okugawa, Keito Inoshita

    IEEE GCCE 2026(IEEE 15th Global Conference on Consumer Electronics)予稿集掲載予定査読あり