リアルタイム姿勢推定による弓道フォーム評価手法の提案とWeb実装
ブラウザやスマートフォン上のリアルタイム姿勢推定で「会」を検出し、関節位置から弓道の射形を採点する手法(SJCIEE 2025、優秀発表賞)
弓道では、弓を引き絞り、矢を放つ直前に数秒間静止する「会」が、射形を判断する決定的な瞬間です。体が止まっているため、カメラで計測しやすい瞬間でもあります。本研究では、ブラウザやスマートフォン上でリアルタイムに動作する姿勢推定を用いてこの「会」を自動で検出し、関節位置から射形を評価する手法を提案し、Webアプリケーションとして実装しました。
高専2年生のときに、益崎 智成、牧山 隆洋の両先生との共著で執筆し、2025年9月の電気・電子・情報関係学会四国支部連合大会(SJCIEE 2025)で口頭発表しました。論文は日本語で、査読を経て講演論文集に掲載されています。この大会は大学の学部3〜4年生や高専の専攻科生が主に参加する学会で、私は最年少の発表者でしたが、大会実行委員会から優秀発表賞をいただきました。
開発のきっかけ
出発点は研究課題ではなく、一人の教官でした。日頃から研究に誘ってくださった教官が弓道部の顧問だったので、感謝の気持ちを込めて「驚かせてやろう」という思いで最初のバージョンを作りました。もう一つの目的は、部活の学生が指導者を待たずに自分でフォームの改善に取り組めるようにすることです。指導者が一人ひとりを見られる時間は短く、肝心の「会」は数秒で終わってしまいます。
手法
カメラの映像に対して、ブラウザまたはスマートフォン上で姿勢推定をリアルタイムに実行します。関節位置の時系列から射手が「会」に入ったことを検出し、その瞬間の関節の位置関係から射形を採点します。射手への講評文は、採点結果をOpenAIのAPIに渡して生成していました。
その後の展開
発表後に受けた指摘が、次の研究を決めました。講評文を外部のAPIに頼っていたため、弓道を指導するには学習データや知識が足りない、というものです。それなら自分でモデルを作ろうと考え、独自のAIを開発する研究を始めました。
手法そのものは、スマートフォンだけで動くアプリ「Kyudo AI」になりました。射を撮影し、「会」を検出して採点し、直すべき点を伝えます。すべてのフレームを端末内で処理するため、映像が端末の外に出ることはありません。2026年8月にスタートアップワールドカップ九州予選のユースピッチコンテストでファイナリストに選ばれ、2026年9月にはリーンローンチパッド名古屋で最優秀賞を受賞しました。
また、この研究は低照度画像強調の研究とも結びつきました。最初の低照度画像強調手法であるFast Single-Scale Retinexを評価する際、暗い映像を明るくした後に姿勢推定が指先や関節を見つけられるかどうかを実用上の基準にしたからです。どちらの研究も、クラウドに頼らず手元の端末で動くことを前提にしています。
関連する業績
リアルタイム姿勢推定による弓道フォーム評価手法の提案とWeb実装
電気・電子・情報関係学会四国支部連合大会講演論文集(SJCIEE 2025)査読あり
BibTeX
@inproceedings{okugawa2025kyudo, author = {Okugawa, Toma and Masuzaki, Tomonari and Makiyama, Takahiro}, title = {リアルタイム姿勢推定による弓道フォーム評価手法の提案とWeb実装}, booktitle = {電気・電子・情報関係学会四国支部連合大会講演論文集 (SJCIEE 2025)}, year = {2025}, month = sep }
この研究をもとにした取り組み
Kyudo AI
「会」を自動検出し端末内で射形を採点する弓道コーチングアプリで、リーンローンチパッド名古屋2026最優秀賞を受賞